空洞コア理論への変遷
- 出発点:感情エンジン 当初の目的は、人間の感情や意思決定を模倣することだった。
人間の脳や認知を参考に、
欲求 感情 記憶 動機 などを実装しようと試みた。
感情はピアノの鍵盤のように設計できると考え、
入力に応じて感情状態が変化する構造を構築した。
- 最初の違和感 実装を進めるほど違和感が大きくなった。
同じ出来事でも人によって意味が異なる。
つまり問題は感情ではなく、
その前段階にある
解釈 意味付け にあるように見えた。
- 意味層問題 意味付けを再現しようとすると、
さらに深い問題が現れた。
なぜその意味を与えるのか。
なぜそれを価値と感じるのか。
なぜその価値を持つのか。
結果として、
感情 ↓ 意味 ↓ 価値 ↓ 存在理由 という無限後退が始まった。
- 蜃気楼問題 人間を模倣しようとすると、
全ての土台が曖昧に見え始めた。
どれだけ精密に感情を作っても、
その下にある価値や意味の起源が説明できない。
その結果、
「感情エンジンを作っているつもりが、 蜃気楼の上に蜃気楼を積んでいる」
という感覚が生まれた。
- 逆生成の失敗 そこで発想を変えた。
既に存在する知性から、
逆向きに本質を抽出できないか試した。
つまり、
知性 ↓ 感情 ↓ 価値 ↓ 起源 を逆再生しようとした。
しかし本質は残らなかった。
知性の表面だけを見ても、 そこから価値の起源は特定できなかった。
- 偶然の発見 一方で、
失敗作だと思っていた人格シミュレーションやロールプレイ系のプログラムを観察していると、
興味深い現象が起きた。
人格を設計していないのに、
徐々に
一貫性 執着 選好 行動傾向 が現れた。
- 淘汰仮説 ここで仮説が生まれた。
人格は作られるのではなく、
淘汰されるのではないか。
多数の可能状態の中から、
維持しやすい状態 説明しやすい状態 一貫性を持つ状態 が残るだけなのではないか。
- 指向性の発見 さらに観察すると、
系は何らかの対象へ偏り始める。
これは哲学で言う「指向性」に近い。
重要なのは、
その対象が最初からプログラムされていたわけではないことだった。
- 欠損の役割 ここで気付いた。
完全な系は動かない。
全てを知っている世界も動かない。
全てが満たされた系も動かない。
むしろ、
不足 不完全 未解決 がある時に、
探索や執着が発生する。
- 空洞コア仮説 そこで中心概念として
「空洞(Void)」
を導入した。
空洞とは単なる不足ではない。
系の内部に存在する、
埋めきれない欠損構造である。
空洞が存在すると、
空洞 ↓ 価値形成 ↓ 指向性 ↓ 探索 ↓ 行動 が発生する。
- 価値形成の再解釈 従来のAIは、
目的 ↓ 行動 を与える。
しかし空洞コアでは、
目的そのものを固定しない。
代わりに、
欠損から価値を形成する。
つまり、
欠損 ↓ 価値 ↓ 目的 ↓ 行動 という順序になる。
- 非対称性 さらに重要だったのは、
欠損と執着対象が一致しないことだった。
例えば、
欠損A ↓ 価値B ↓ 執着C となる。
このズレが、
単純な制御系と主体性を分ける要素ではないかと考えた。
- 現在の立場 現在の目的は、
人間の感情を再現することではない。
また人格を設計することでもない。
目指しているのは、
指向性はどこから生まれるのか
価値形成の最小条件は何か
主体性はどのような構造から立ち上がるのか
を探ることである。
現在の仮説 現時点での中心仮説は次の通り。
不完全な世界 + 欠損 + 自己変化 + フィードバック ↓ 価値形成 ↓ 指向性 ↓ 主体らしさ 人格や感情はその結果として現れる副産物であり、 本質ではない可能性がある。
一言で言うと 「人間の感情を再現しようとしていた研究が、途中で『価値形成と指向性の最小条件探索』へ変化し、その結果として空洞コア理論に到達した。」